社説:国会代表質問 求められる誠実な答弁

 岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党代表質問が衆院本会議で始まった。安全保障政策の大転換や防衛費大幅増額、次元の異なる少子化対策などは国会で議論を尽くすべき重要な焦点だ。岸田首相には国民負担に関わることでも正面から伝える誠実な答弁を求めたい。

 立憲民主党の泉健太代表は防衛費増額や増税方針を国会での議論を経ない「乱暴な決定」と非難した。増額は反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有する安保政策大転換と共に臨時国会閉会後の昨年12月に閣議決定。これでは国会軽視が甚だしい。

 岸田首相は防衛費増額について防衛力抜本強化の必要性を強調した。「ミサイル発射に着手した段階での発動は先制攻撃にならざるを得ない」と批判された反撃能力を「抑止力として不可欠」と従来説明を繰り返し、議論は深まらなかった。

 前日の参院本会議では防衛力増強方針について「先進7カ国(G7)首脳から前向きな反応を得た」と説明していた。国会より先に外遊先で報告するのは既成事実化が狙いなのか。評価を誇らしげに語るのではなく、まず国会で説明するのが筋だ。

 2027年度まで5年間の防衛費増額は、なぜ約43兆円まで膨らんだのか。理由すら詳しく説明されていない。その内容をまず国会で明らかにする必要があろう。その上で増税を含む財源についてもしっかり議論しなくてはならない。

 年頭記者会見で岸田首相が掲げた「異次元の少子化対策」は23年度予算から増額が始まる防衛費とはスピード感が全く異なる。具体的な内容はおろか、実施時期、財源なども明らかとなっていない。

 はっきりしているのは子ども・子育て予算の「将来的な倍増」という大枠のみだ。代表質問で野党側が「中身も財源も全く白紙。今国会で示すべきだ」と批判したのは当然だろう。

 22年に生まれた子どもの数は初の80万人割れとみられる。加速する少子化の深刻さは今更言うまでもない。歴代政権が対策に取り組んできたが、事態は一向に改善できなかった。

 野党側が指摘したように過去の対策がなぜ成果を上げられなかったのかという検証をまず急ぐべきだ。与野党が国会論議でより効果が期待できる対策を打ち出し、安定した財源を確保することが求められる。

 4月の統一地方選や衆院補欠選挙をにらみ、増税など国民負担に関わる問題には与野党とも慎重な姿勢だ。ただ財源を明確にしない姿勢や国債頼みでは無責任。将来を担う世代への負担先送りになってしまうからだ。

 財政赤字が続き、長期債務残高は1千兆円を超えた。防衛費、子育て予算の倍増が困難なら見直しも必要ではないか。

 若者が自らや家族、国の未来にどうしたら希望を抱けるのか。国の針路を定める政治が果たす責任は実に重い。

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