社説:ガーシー氏懲罰 国会欠席は職務放棄だ

 参院は22日の本会議で、国会欠席を続けるNHK党のガーシー(本名・東谷義和)議員に対し「議場での陳謝」を科す懲罰を与野党の賛成多数で決めた。尾辻秀久参院議長は次回本会議への出席を文書で命じた。

 国の唯一の立法機関である国会は国民の生活に深く関わる予算案や法案を審議、採決するほか、行政の監視という役目も負う。国会法は議員に対し、召集日に国会に登院するよう義務付けている。正当な理由なく本会議や委員会を欠席するのは自覚と責任感を欠いた職務放棄と言うしかない。

 ガーシー氏が初当選したのは昨年7月。2度の臨時国会に続き、今通常国会も欠席している。当選から半年以上も登院していない。アラブ首長国連邦などに滞在しており、3月上旬には帰国する意思を示している。

 再三の出席要請に応じないため、尾辻議長は国会法に基づき参院懲罰委員会に処分の検討を付託した。懲罰委では「職責を果たしているとは到底言えない」などの指摘があり全会一致で処分を決め、本会議で正式決定した。有権者の負託に応えず国会欠席を続ける以上、懲罰を科したのは当然だろう。

 懲罰のうち、陳謝は除名、登院停止に次いで重い。議員の身分を失う除名の場合は、本会議で出席議員の3分の2以上が賛成する必要がある。有権者に選ばれた議員の身分の扱いは慎重であるべきだということだ。

 ガーシー氏は陳謝に応じる方向で検討すると周辺に伝えたとされるが、実際帰国するかどうかは不透明だ。応じない場合、与野党は再び懲罰を検討、除名とすることも視野に入れている。

 ガーシー氏は芸能界の裏側を暴露するとして、インターネット上の動画投稿サイトに投稿してきた。選挙では候補者名でも投票できる参院比例で28万7千票を集めた。「何か面白いことをやってくれるのでは」という期待や、既成政治への批判票を取り込んだことが得票につながったとの分析がある。

 サイトで複数の著名人を中傷、脅迫したとして、ガーシー氏は名誉毀損(きそん)などの疑いで告訴されている。このため「不当逮捕される恐れがある」などと欠席の理由を説明している。またN党はガーシー氏が海外で議員活動をすると公言し当選したとして、議員活動は国会を離れていても可能だと主張している。

 有権者が納得できる理由と言えるだろうか。不当に逮捕されるというなら、自ら国民に潔白を訴え説明責任を果たさなければならない。

 選挙で当選して議員になった以上は国会法の登院義務を受け入れるのは当然だ。海外での議員活動を主張することは法律を順守しないと宣言しているに等しい。ガーシー氏を比例名簿に登載したN党の責任は重い。N党は直ちに登院、陳謝を促し、国民の代表としての責務を果たさせるべきだ。

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