北斗星(3月28日付)

 旅立ちの春、進学や就職などに伴う新天地での生活に不安を感じている人もいるだろう。予期せず古里を離れざるを得なかったという体験の持ち主もいる。仙台市の松七五三萌々香(まつしめ・ももか)さん(21)がそうだ

▼福島県南相馬市出身。東日本大震災直後の2011年3月中旬、親類の住む湯沢市へ家族と避難した。当時小学3年生。先の見えない生活に悩み、暗い気持ちになったことは数え切れない。6年間暮らし、湯沢南中学校を卒業した時は晴れやかな気持ちになれた

▼不安な日々を救ってくれたのは音楽だった。避難先の小学校でできた友達に誘われ音楽部に入部。大勢で演奏する楽しさを知り、中学では吹奏楽部へ。小太鼓や木琴を担当し、最後は約50人のメンバーをまとめる部長を務めた

▼進学を機に仙台へ移ったが、多感な時期を過ごした本県の友人たちは今も特別な存在だ。昨夏は湯沢で二十歳を祝う会に参加。仙台でも吹奏楽を続け、地域の演奏会などに参加している

▼現在は仙台高等専門学校専攻科1年。放射線計測器の開発に取り組む。震災に翻弄(ほんろう)された子どもの頃を思い出し、不思議な縁を感じている。「秋田で暮らさなければ出会えなかった友達、得られなかった経験があった。日常は突然一変したが、新たな環境に適応できたことが自信につながり、今の礎になっている」

▼順風満帆とはいかないのが人生。不安や悩みの先にこそ自分らしい道があるのかもしれない。この春旅立つ人にエールを送りたい。

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