社説:G7閣僚会合 日本、脱炭素へ決意示せ
5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、G7の関係閣僚会合が相次ぎ開かれている。地球温暖化対策が主要議題となった気候・エネルギー・環境相会合は閉幕後、「化石燃料使用の段階的廃止を加速する」とする共同声明を発表。しかし温室効果ガス削減の具体策や数値目標の進展がほとんどなかったのは残念と言わざるを得ない。
日本はサミットまでに温暖化対策の再検討を急ぎ、脱炭素化への強い決意を示すべきだ。議長国の責任を果たすため、サミットの議論を前向きに進めるよう主導することが求められる。
平均気温上昇を「1・5度」以内に抑えるとするパリ協定の目標を巡り、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月、報告書を公表。2030年に世界の二酸化炭素(CO2)排出を19年比で半減させ、35年には65%減らす必要があるとした。国連のグテレス事務総長は40年ごろの「排出実質ゼロ」を先進国に求めている。
こうした状況を受け、環境相会合の共同声明は、50年の温室効果ガス「実質ゼロ」の実現に向け、CO2排出量が多い石炭火力だけでなく、天然ガスについても段階的廃止を加速するとした。だが、いつまでに、どの程度廃止するかという具体的な工程表は示されなかった。
温暖化対策はサミットの重要な議題の一つ。昨年は電力部門に関し「35年までの完全または大部分の脱炭素化」で合意した。今会合の事前交渉では、欧州などが目標時期の前倒しを迫り、対策強化を求めていた。
日本は30年代以降も石炭火力を維持する方針を掲げる。日本が前倒しに反対したため、共同声明は昨年の合意をなぞる形にとどまった。将来、世界のCO2排出量削減に遅れが生じれば、日本の責任が問われることにもなりかねない。
各国は再生可能エネルギーの拡大に取り組み、電力部門からのCO2排出削減を進めている。日本の消極姿勢は、CO2削減対策が他国に後れを取っている証左にほかならない。
必要なのは目標年限を明示した具体策だ。日本は率先して、削減を進めるべき立場にあることを忘れてはならない。
一方、G7外相会合は核戦力を急拡大する中国への懸念を表明し、核を巡る透明性向上を強く求める共同声明を発表した。また、ロシアによるウクライナ侵攻や中国の覇権主義的行動で揺らぐ国際秩序を堅持するために結束することを再確認した。
ウクライナ侵攻は長期化し、打開策は見いだせていない。米中対立は深まり、台湾海峡の緊張は高まっている。解決に向け日本の平和外交も試されよう。
地球温暖化対策や国際秩序の維持に向け、G7議長国である日本の責任は極めて重い。それぞれの課題への取り組みを再検討し、サミットでリーダーシップを発揮する必要がある。