社説:国会終盤へ 防衛費増額、議論尽くせ
国会は会期末まであと1カ月余りとなった。防衛費大幅増額の財源を確保する特別措置法案、外国人の収容・送還のルールを見直す入管難民法改正案などの論戦の舞台は参院に移る。
これらの法案を巡り、衆院で十分議論が尽くされたのか疑問だ。日本の行方を左右しかねない課題が山積する中、政府、与党は野党と議論を徹底し、国民の理解を得る努力を重ねるべきだ。場合によっては会期を延長してでも、国民の疑問に答えなければならない。
防衛力の抜本的強化を目指す政府は、2023~27年度の防衛費を総額43兆円とする計画。27年度以降は財源の一部1兆円を増税で賄う方針だ。その裏付けとして今国会に防衛財源確保特措法案を提出。与党は早期に衆院を通過させる構えだ。
だが、安全保障政策の大転換につながるにもかかわらず、防衛費増額の積算根拠や財源確保策については不明な点が多い。法案には立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党がそろって反対している。終盤国会最大の論点として、議論の深まりが期待される。
岸田文雄首相が掲げる「次元の異なる少子化対策」は3月末に試案が示された。その予算も数兆円規模が必要とされる。防衛費と合わせ、巨額の財源をどうやって捻出するのだろうか。こうした疑問にも明確な説明が求められよう。
入管法改正案は、不法滞在などで強制退去を命じられても本国送還を拒む外国人が、入管施設に長期収容される事態をなくすのが狙いだ。難民認定申請中は本国への強制送還を停止する措置を原則2回に制限。3回目以降は「難民認定すべき相当の理由」が認められない限り、いつでも送還できるようにする。
この案では、本国で迫害を受ける可能性のある人まで強制送還する恐れがあると支援団体などは指摘する。外国人収容を巡り度々問題になってきた人権侵害や、他の先進国と比べ桁違いに低い難民認定率など、入管行政が抱える問題の根本的解決には程遠いと言わざるを得ない。
維新は、出入国在留管理庁の難民認定担当職員の研修などに関する規定を設けるという小幅な修正を条件に賛成に回り、国民も同調。法案は、ほぼ原案通りに衆院を通過した。
これに対し立民などは、独立した第三者機関が難民認定を担うとする対案を参院に共同提案した。難民認定を行政の裁量に任せず、第三者が中立公正な立場で判断する仕組みは検討の価値があるのではないか。
政府、与党は60年超の原発の運転を可能にする法案も今国会で成立させる構え。LGBTなど性的少数者への理解増進法案は自民保守派の反対のため、いまだ国会提出に至っていない。
これらの課題はいずれも国会の場で、国民に見える形で議論が徹底されるべきだ。言論の府として国会の責務は重い。