北斗星(5月13日付)

 道路脇に花が供えられているのを県内でも時折目にする。交通事故で誰かが命を落とした現場だろう。風に揺れる花の姿が、亡くなった人とその家族らの無念さを感じさせる

▼交通事故で子を失った県内の女性の講演内容が以前、本紙に載っていた。「突然、理不尽に息子の命を奪われ、混乱と悲しみ、加害者への怒りでいっぱいだった」。抱えた苦しみを想像するだけで胸がつぶれそうになる

▼車で人をはね死なせた男性に話を聞いたことがある。運転しながら飲み物を口にし、一瞬そらした視線を進行方向に戻すと、脇から道路に出てくる人の姿があった。慌ててブレーキを踏んだが間に合わなかった

▼10年以上前、県内の国道で起きた事故である。男性は人の命を奪ってしまった事態の重さに震え、パトカーの後部座席でうなりながら前のシートに頭を打ち続けた。今でも当時の光景が思い起こされ、罪の意識と悔恨の念にかられるという

▼時速60キロで走行した場合、2秒間に進む距離は33・3メートルに及ぶ。事態は一瞬で変わる。昨年、県内で起きた人身事故は1157件。法令違反別で最多は前方不注意の258件、全体の22・3%だった。この傾向はずっと続いている

▼春の全国交通安全運動がことしも始まった。黄色い帽子の初々しい新入学児童を通りで見かける。気の緩みはないだろうか、ハンドルを握るたび省みたい。命を奪う事故は被害者側にはもちろん、加害者にも消えることのない苦しみを背負わす。

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