社説:日本海中部地震40年 逃げる意識、皆で共有を

 本県で83人が犠牲となった日本海中部地震から、きょうで40年となった。惨事を風化させず、教訓にしていくことが重要だ。「県民防災の日」を機に災害への備えを改めて確認し、非常時には命を守るため即座に「逃げる」意識を皆で共有したい。

 地震は午前11時59分に発生した。秋田・青森両県沖を震源とし、マグニチュード7・7、最大震度5を観測。強い揺れに続き、東北の日本海側を中心に大津波が押し寄せた。津波高は峰浜村(現八峰町)で14メートル、八竜町(現三種町)で6・6メートルに達した。県内では、遠足中の旧合川南小児童13人を含む79人が津波にのまれて命を落とした。

 仙台管区気象台は発生から15分後に「オオツナミ」警報を出したが、男鹿市にはその6分前に第1波が到達。「日本海には津波はない」との俗説と相まって避難が遅れ、多くの犠牲者が出る要因になったとされる。

 東日本大震災で「釜石の奇跡」につながった防災教育の指導者、片田敏孝東大特任教授(災害社会工学)は、かつての講演で日本海側の地震や津波についてこう解説している。「太平洋側に比べ津波の発生頻度は低いものの、地震の規模が大きくなる。震源域と陸地の距離が近いため津波の到達も早い。さらに、日本海が狭いため津波が反射して繰り返し襲来する」

 こうした特徴を踏まえ、「揺れたら直ちに高台へ逃げる」という意識と行動を本県沿岸部で根付かせる必要があろう。注意報や警報の発表を待っていては逃げ遅れる可能性もある。南海トラフ巨大地震では、5分以内に和歌山や高知の一部へ津波が来ると想定されている。日本海側でも同様の事態が起こり得ると認識しなくてはならない。

 県は2012年12月、本県沖で最大規模の連動地震が起きた場合、10~14メートルの津波が押し寄せるとの想定をまとめた。いざという時、「(家族は)安全な場所に逃げたはず」と互いに確信できるよう家庭内で認識を共有しておきたい。そのためにも日頃から避難路を決め、防災意識を高めておくべきだろう。

 今月に入り、石川や千葉などで震度5弱以上の地震が続発。まさにわれわれは「地震列島」に暮らしている。

 5日に石川県珠洲市で起きた地震後、同志社大が行った調査では、緊急地震速報に気付いた人の約8割が身を守るための行動をすぐに取らずに「携帯の画面を見る」「揺れを身構えて待つ」などしていた。

 いざという時には人は動けなくなるという自覚を持ち、▽落下物から身を守る▽扉を開けて避難路を確保する―など、取るべき行動を確認しておきたい。あらかじめ家具を固定しておく対策も講じる必要がある。

 秋田県民の3・5人に1人は日本海中部地震を経験していない。世代を超えて甚大な被害を伝え、警鐘を鳴らし続けていかなければならない。

お気に入りに登録
シェアする

秋田魁新報(紙の新聞)は購読中ですか

紙の新聞を購読中です

秋田魁新報を定期購読中なら、新聞併読コース(新聞購読料+月額330円)がお得です。

新聞は購読していません

購読してなくてもウェブコースに登録すると、記事を読むことができます。

関連ニュース

秋田の最新ニュース