社説:2次医療圏再編 影響の説明、しっかりと

 一般的な入院治療が完結できる県内の「2次医療圏」を、現行の八つから三つに再編する案が県医療審議会医療計画部会で了承された。県は策定中の次期医療計画(2024~29年度)に反映する方針だ。県民に不安が広がらないよう、再編の必要性や影響に関する丁寧な説明が求められる。

 2次医療圏は、がんや脳卒中などの入院治療や救急医療などに対応するエリア。本県では1988年以来、8医療圏が維持されているが、患者の減少や医師不足などに伴い、見直しが検討されてきた。

 今回承認されたのは、県内を県北、県央、県南の三つに再編する案だ。県北と県央を二つずつに分けて5医療圏とする案もあったが、人口減が進めば再見直しが必要になるとの理由から、三つにする案が選ばれた。

 8医療圏のうち「北秋田」など3圏域では、周辺への患者流出が著しく、機能維持が難しくなりつつある。患者が減り続ければ診療科や入院機能の縮小・廃止に踏み切らざるを得なくなる。必要な医療を確実に受けられる体制を堅持する上で、圏域の見直しは避けて通れない。

 医師の不足や偏在も顕在化している。厚生労働省の2020年調査によると、人口10万人当たりの本県の医師数は242・6人で、全国平均256・6人を下回る。医療圏別では「秋田周辺」が333・2人と突出して多い一方、「北秋田」124・0人、「湯沢・雄勝」126・2人と全国平均の半数にとどまる圏域もあり、差が際立つ。

 こうした課題に対処するには、医療資源の集約と機能分担を図る必要がある。脳梗塞などを治療する「急性期」を特定の病院に集約し、他の病院をリハビリ向けの「回復期」や長期入院の「慢性期」にすることなどが想定される。若手医師に集まってもらいやすくするため、多くの症例を経験できる環境を整える観点も忘れてはならない。

 ただ、受診環境が変わることに不安を抱く県民は少なくない。圏域再編に伴い、地元の医師が少なくなったり、遠くの病院に通わざるを得なくなったりするケースが生じる可能性があるからだ。次期医療計画を作るに当たり、県は再編の方向性だけでなく、患者にどのような影響が及ぶかや、想定される課題にどう対処するかを、しっかりと示さなくてはならない。

 とりわけ、高齢者をはじめとする交通弱者の通院負担が今より大きくなる事態は避けたい。患者の足を確保する何らかの手だてが必要だろう。

 訪問診療・看護や見守りなど地域包括ケアシステムを支える機能を一層充実させることも重要だ。併せて、デジタル化を進めて遠隔診療を普及させるなど新たな取り組みも求められよう。医療資源には限りがある。県民が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、効率的に提供する仕組みを築きたい。

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