秋田駅周辺の冠水は内水氾濫か 下水道や水路の処理能力超える?

14日からの記録的大雨により秋田市のJR秋田駅周辺で発生した水害は、下水道や水路から排水しきれない雨水があふれる「内水氾濫」だったとみられている。近年、全国各地の都市で大きな被害が出ており、降り始めから短時間で浸水するのが特徴。対策が急務となっており、秋田市も市中心部の「内水浸水想定区域図」を6月末に公表したばかりだった。
内水氾濫は、下水道や水路の排水能力を超える雨が降ったり、排水先の河川の水位が高くなったりして、行き場を失った雨水が市街地にあふれ出る災害。河川の水が堤防などを越えて流れ出す外水氾濫に比べ、短時間で被害が発生し、川から離れた地域でも浸水が起きるとされる。
最近では2019年の台風19号で、東日本の広範囲で発生。15都県で約1万2千戸が浸水被害に遭った。これを受けて21年に水防法が改正され、下水道事業を担う自治体などは、千年に一度のレベルの雨を想定した浸水区域図を作るよう義務付けられた。
今回、秋田駅周辺では中通、南通、東通などで病院や公共施設を含む多数の建物が浸水被害に遭い、道路も冠水した。駅から約500メートル南の明田地下道は完全に水没した。
氾濫した太平川は、最も近い所でも秋田駅から約1キロ、明田地下道からは約600メートル離れている。このため駅周辺の冠水について、県や市は内水氾濫による可能性が高いとみている。

17日の県災害対策本部会議で佐竹敬久知事は「そばに水路や河川がない所で相当冠水している。内水氾濫という解釈が成り立つ」と述べた。穂積志市長も「可能性は十分にある。少なくとも駅から旭川までの範囲は内水氾濫だったと思う」と語った。
水害に詳しい日本防災研究センター(東京)の古本尚樹さんも内水氾濫の可能性を指摘。「海抜が低く道路舗装が進んだ都市部で起きやすい現象。ものすごい雨量で排水機能が追い付かなかったのではないか」とみる。
市は国の方針に基づき、21年から「内水浸水想定区域図」の作成を進めている。1時間に150ミリの最大降水量を想定し、昨年5月に仁井田、御野場、大住、牛島の4地区分を公表。今年6月30日には中通、南通、楢山、千秋の一部についてもホームページで公表し、今後本格的に周知するところだった。
区域図で3~100センチの浸水が想定されていた中通3丁目で、化粧品店を営む梅里千代子さん(65)は、15日の大雨で店内が20センチほど水に漬かった。想定は知らなかったといい「今まで中通で浸水なんてなかった。今回の被害は想像していなかった」と驚く。「避難訓練などを通じて想定が周知されれば、気持ちの余裕が生まれる。お年寄りの迅速な避難にもつながるのではないか」と話した。
日本防災研究センターの古本さんは、今後の対策について「想定外だったで済ませず、検証しなければならない。排水能力をどう上げるか考える必要がある。同時に被害を最小限にするため、止水板を設置するといった対策も大事だ」と指摘した。