「自然の力にはかなわない」 秋田市中心部の飲食店に打撃

 秋田県内を襲った大雨の被害を受け、秋田市大町やJR秋田駅周辺の飲食店が復旧作業に追われている。新型コロナウイルスが5類に移行し夏本番を間近に控えたタイミングで、予約や注文キャンセルなどの打撃も。いまだ営業のめどが立たない店舗もある一方、片付けを終え再開した店も出ている。

「割烹かめ清」で浸水した地下の物置から運び出した食器の状態を確認する店主の雑賀さん(左)=秋田市大町

 「自然の力にはかなわない。店を継いでから40年以上になるが、こんな災害は初めて」。同市大町の繁華街・川反の「割烹(かっぽう)かめ清」で片付けをしていた店主の雑賀清一さん(68)は、ため息を漏らした。

 店内は無事だったが、旭川に面する外壁に設置していた室外機が水をかぶり、エアコンが使えなくなった。備品などを置いていた地下の物置は浸水し膝上まで水に漬かった。

 新型コロナの5類移行を追い風に県外からの客足が戻り始め、大人数での宴会も増えてきた中での被害。月内の予約は全てキャンセルとなり、営業再開のめどは立っていない。

 19日から復旧作業に取りかかり、雑賀さんは地下から運び出した食器などの状態を一つ一つチェックした。片付けにはまだ時間がかかるが、手伝いを申し出てくれる知人たちの存在が心強いという。「災害を教訓に、一日も早い再開を目指す」と力強く語った。

扇風機で換気しながら後片付けを進めている居酒屋「望」=秋田市中通

 中通の居酒屋「望」は調理場が浸水。電子レンジなどの家電は無事だったが、店内が停電し冷蔵庫内の食材は処分せざるを得なくなった。

 店を営む佐藤久子さん(82)は「店内まで水が入ってくることなんてなかった。自然の力は怖い」とつぶやく。開店から30年近くになるが、大雨によるここまでの被害は経験がないという。

 電気は18日に復旧し、扇風機を回して換気しながら調理場をモップがけするなどして営業再開へ準備を進めている。常連客が顔を出してくれ、既に複数人の予約が入っている日もある。佐藤さんは「こうした状況でも足を運んでくれるお客さんがいるのはありがたい。調理場が乾けば本格的に営業できそう」と前を向いた。

 東通の洋食店「NOVE」は玄関やレジ周りなどが床上10センチほどまで浸水。注文を受ける機器などが被害を受けた。16日に従業員らが店舗の清掃を行い、故障した機器に応急処置を施して17日に営業再開にこぎ着けた。ただ客足は通常時の3分の1ほどに減っており、イベント中止などで弁当の注文もキャンセルが出るなど、余波は続いているという。

 担当者は「市内はまだ復旧作業中の所が多いと思う。店を開けることで、以前の風景に少しずつ戻っているところもあるとお客さんに感じてもらえれば」と話す。

 東通の「つけめんSHE-HAR」は店内に泥水が入り込み、床が一時泥だらけになった。5人の従業員の中には自宅が被災した人もいたため、出勤できた従業員とオーナーの篠田亮太さん(46)の2人で16日にデッキブラシなどを使って店内の泥を取り除き、水で洗い流して17日に営業を再開した。

 篠田さんは「少しでも早く再開したかった。被害を受けた方々に料理を食べてもらい元気になってもらいたい」と笑顔を見せた。

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