社説:洋上風力汚職事件 政策への影響検証せよ

 自民党を離党した秋本真利衆院議員(比例南関東)が、受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。洋上風力発電事業を手がける「日本風力開発」に有利な国会質問をするよう前社長から依頼を受け、総額約6100万円の賄賂を受け取った疑いが持たれている。

 秋本容疑者は容疑を否認し、前社長は贈賄容疑を認めている。徹底した捜査で真相が解明されなければならない。

 秋本容疑者が国会で質問した後、日本風力開発の意向に沿った形に政策が変更された。政府は質問との関連を否定するが、再生可能エネルギー普及の「切り札」と位置付ける事業の信頼性や公正性にまで疑念が生じていると言わざるを得ない。

 洋上風力発電は本県も関わりが深いだけに見逃すことはできない。政府、国会は政策に対する影響の有無を検証し、信頼回復に努めるべきだ。

 2021年に再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の第1弾公募が本県、千葉県沖の計3海域を対象に行われ、このうち本県沖2海域に日本風力開発が参加したとされる。しかし売電価格の圧倒的な安さで三菱商事を中心とする企業連合が全海域を落札した。

 賄賂との関連が疑われている国会質問の一つは22年2月にあった。秋本容疑者は入札業者の評価基準について「売電価格よりも運転開始時期の早さを評価すべきだ」と変更を求めた。

 既に第2弾公募が始まっていたが、3月に政府は評価基準の見直し方針を表明。10月には早期稼働の重視を盛り込んだ新たな評価基準を公表した。その直後に日本風力開発から秋本容疑者に賄賂の一部の1千万円が渡ったとされる。

 事実とすれば、国権の最高機関である国会の審議をカネで売買したに等しい。国会への信頼を揺るがす事態だ。

 政府は評価基準の変更について「有識者会議やパブリックコメント(意見公募)の手続きを経た上での結論」と説明している。第2弾公募は評価基準の見直しのための一時中断を挟み、今年6月に締め切られた。事業者の選定が進んでいる。

 まずは評価基準変更の経緯について政府の詳細な説明が必要だ。今後発表する第2弾公募の選定結果に影響がないことを明確にしなければ、国民の納得は得られない。

 昨年12月から今年1月にかけて能代、秋田両港湾区域で国内初となる洋上風力発電の大規模商業運転が始まった。第1弾公募の事業では、風車に使われる部品を地元から供給する業者の候補が決まった。県内では国内先進地としての発展に期待が高まっている。

 再エネ導入は脱炭素社会の推進に不可欠であり、汚職でブレーキがかかるようなことがあってはならない。事件の解明とともに、事業者選定に透明性の確保も求められる。

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