太宰、被害意識が「人間失格」に 入院巡る井伏の書簡発見

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井伏鱒二が太宰治の状況をつづった佐藤春夫宛ての手紙(実践女子大提供)
井伏鱒二が太宰治の状況をつづった佐藤春夫宛ての手紙(実践女子大提供)

 作家の井伏鱒二が、「パビナール(鎮痛剤)中毒」で精神科病院に入院していた弟子の太宰治に強い被害者意識がある様子を、井伏の師だった佐藤春夫に伝える書簡が26日までに見つかった。太宰は「だまされて入院させられた」などと訴えていたとし、専門家は「この時味わった屈辱感や被害者意識が不信感にさいなまれる主人公として文学的に表現され、代表作『人間失格』につながった」とみている。

 新たに見つかった書簡は井伏から佐藤に宛てた7点。実践女子大が進める佐藤の遺品整理中に見つかり、東京大の河野龍也准教授が確認した。

 太宰は1935年4月の虫垂炎などの手術後、パビナールを多用して依存症になり、井伏が本人を説得し翌年10月に入院させた。同月23日に井伏が書いた手紙では、病院長に会った当時の太宰の妻、初代からの伝聞を基に「まだ苦痛がとれないで妄想的なことを口走っている」「私たちが太宰をだまして入院さしたと憤慨している」などとつづっている。

 河野准教授は「太宰を再起できるよう気遣っていた様子も分かる」と話している。

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