社説:羽後町の民俗芸能 定期公演続け継承図れ

 本県には国の重要無形民俗文化財が17件あり、指定を受けている以外にも多様な民俗芸能が存在する。だが少子高齢化が急速に進む中で継承していくのは容易ではなく、今後さらに困難になることが予想される。

 羽後町教育委員会が9月から、町民話伝承館で民俗芸能の無料定期公演を始めたことは注目に値する。保存団体に日頃の練習の成果を多くの人に披露する場を提供することで、それぞれの民俗芸能の知名度を高め、担い手を確保する狙いがある。これを定着させ、継承につなげてほしい。

 町内には昨年11月に「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つとして国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「西馬音内盆踊り」のほか、県無形民俗文化財の「仙道番楽」「猿倉人形芝居」、町無形民俗文化財の「元城獅子舞」の計三つの民俗芸能がある。

 日本三大盆踊りに数えられる西馬音内盆踊りは全国的に知られ、イベントなどの引き合いも多いが、他の民俗芸能は、地元などで年数回程度上演されるにとどまる。担い手や演じる演目数も減り、存続が危ぶまれているのが現状だ。

 無料定期公演は、西馬音内盆踊り会館で盆踊りの定期公演が行われている毎月第2土曜日に合わせて開催される。これまで仙道番楽と元城獅子舞が、それぞれ隔月で上演。いずれも町内外から約30人が観覧した。

 まずは多くの人に見て、知ってもらうことが重要だ。その取り組みをきっかけに、民俗芸能の素晴らしさに加え、継承することの重要性などを認識してもらえるようにしたい。

 観衆の前に立つ機会が増えることは、演者の励みになるだろう。それが一人一人の技量の向上にもつながることが期待される。無料定期公演は12月でいったん終了するが、町教委は新年度も継続する方針だ。町外にも広く周知を図るなど、もっと多くの人に見てもらうよう努めるべきだろう。

 少子高齢化などで民俗芸能の継承が困難な局面を迎えているのは羽後町に限らない。県教委によると、1993年当時活動していた315の保存団体は2013年には40減って275。以後もその傾向は続いているという。

 一度途絶えさせてしまったものを再興させるのは難しい。地域で受け継がれた文化を失うことは住民同士の結び付きの希薄化にもつながりかねない。

 保存団体は、後継者不足をはじめ、指導者の高齢化、用具の老朽化など、さまざまな悩みを抱えているという。小中学校の授業に出向き裾野を広げる活動など、取り組みを息長く続けることが必要だろう。行政は実情を把握し、保存団体や地域などと連携を図りながら課題を克服できるよう、継承や普及のために必要な支援に一層力を入れてもらいたい。

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