北斗星(11月19日付)
「史跡に『特別』と付けば国宝級という意味だ。縄文遺跡で特別史跡は四つだけ。東北には青森の三内丸山遺跡と鹿角の大湯環状列石がある」。先月、三内丸山遺跡センター所長の岡田康博さんの講話を聴き、身近に国宝級の史跡があることを誇らしく思った
▼いずれも17遺跡で構成される世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の中核的な存在。2021年の登録後、見学者は増える傾向にある。だが三内丸山には22年度に遺跡群全体の半数近い20万人超が訪れたのに対し大湯は3万人弱。大型掘立柱(ほったてばしら)建物が圧倒的な迫力の三内丸山の知名度は別格だが、これほど差がつくのは残念な気がする
▼国内の他の世界遺産では登録から何年かたつと来訪者が減る傾向にある。ブームを長く維持するのは容易ではない
▼「縄文遺跡の弱点は『一度見たらもういい』と思われがちなこと。次の年も新たな学びや楽しみを提供する戦略が不可欠」と岡田さん。縄文人の衣装貸し出しや発掘現場公開に加え、食の催しなどを企画したそうだ
▼三内丸山は全体が厚さ数メートルの土で覆われ、遺構は地下にある。来訪者が見学する建物は想像の産物だ。その点、環状列石は地表にある縄文の世界をストレートに目にすることができる。遺跡を分断する形で県道が通っているのがネックだが、移設計画があり関心が集まっている
▼国宝級の価値を、いかに多くの人に知ってもらうか。そのための企画に力を入れれば、存在感はより高まるだろう。
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