「切字(きれじ)」を上手に使おう

(2020年4月6日 付)

かったるさを表現

居残りの窓の向こうは夕時雨

 齊藤徹生さん(秋田中央高3年)作。放課後の教室、勉強に飽きて窓の外を見ると夕時雨。これをさらにふくらみのある句にするため、切字の「や」を使い、

居残りや窓の向こうは夕時雨

としてはどうでしょうか。かったるい気分が出ると思います。

読者の視線を誘う

鹿の子跳ね川石濡らすひづめ跡

 雄勝高校を今春卒業した篠木諒太さん(横手市、会社員18歳)作。子鹿が川の石を跳んで渡った「跡」を詠みました。今眼前を跳び渡っている姿を想像して、

川石を濡らすひづめや鹿の子跳ぶ

としてはどうでしょうか。読者の視線は「ひづめ」に集中します。

スピード感を出す

はまなすやカーテン開ける旅の朝

 堀川南さん(秋田北高3年)作。宿に泊まって目が覚めた。サッとカーテンを開くと目の前にハマナス。さっきの二句と逆に、あえて「や」を使わない書き方を試みます。

はまなすにカーテン開けて旅の朝

としてはどうでしょうか。カーテンとハマナスが近くなります。また、スピードのある語り口になると思います。

 切字の「や」は<古池や蛙飛こむ水のおと>の「や」です。「や」があると一句の中に小休止が出来ますので、句がゆったりと仕上がります。「や」の前の言葉(さきほどの「居残り」「ひづめ」)を強調する効果もあります。その一方「や」を使うと句が古めかしく見えることもあります。「はまなす」の例のように、あえて「や」を使わない選択肢もあります。「や」を使う形と使わない形を書き並べ、見比べるとよいでしょう。

句案を見比べる

河童忌に鼻のにきびをつぶしけり

 外舘翔海さん(秋田北高3年)作。河童(かっぱ)忌は芥川龍之介の忌日。芥川の『鼻』は異常な鼻に悩む高僧を戯画(ぎが)化した作です。そのことを思いながら自分の鼻のニキビを潰(つぶ)したのです。

河童忌の鼻のにきびをつぶしけり

とすると「河童忌」と「鼻」の関係が近くなります。そうすると作者の意図が見え過ぎるので、あえてさりげなく「河童忌に」としたのかもしれません。「や」を使って「河童忌や鼻のにきびをつぶしたる」と書くこともできます。

 どの形が自分の気持にしっくり来るか。自分が自分の句の読者になったつもりで複数の句案を見比べることが肝心です(言うは易く、行うは難しですが)。

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