響きと余韻を楽しもう

(2020年4月20日 付)

 第1回目(4月6日付)のこのコーナーはいかがでしたでしょうか。私のお示しする添削案は、あくまでも一つの選択肢にすぎません。ぜひ批判的な目でお読みいただきたいと思います。

 今回は前回に引き続き、切字の「や」を用いた添削を試みます。

響きを良くする

オリオンの吹雪を透かす三連星

櫻庭小夏さん(大館鳳鳴高3年)の作。吹雪の上の夜空にオリオンの三つ星が見えた。力強い作品です。これをさらに響きの良い句にするため、切字の「や」を使い、

オリオンや吹雪を透かす三連星

としてはどうでしょうか。「オリオンや」とすると、オリオンの全体像が一度目に浮かびます。さらにそこから三つ星にズームインしてゆく感じです。なお、オリオンと吹雪はともに冬の季語ですが、どちらもこの句にとって必要な言葉です。「季重なり」の問題は生じません。

流れを断ち切る

星飛びて雨に降られたままでいる

千葉優翔さん(秋田大1年)の作。「星飛ぶ」は流れ星。秋の季語です。雨が上がって流れ星が飛んだ。雨に降られて濡れた状態でしばらく夜空を見つめている。叙情的な作品です。「星飛びて」に続いて「雨に降られたままでいる」という叙述の流れがあるわけですが、その流れを断ち切ってみましょう。切字の「や」を使って、

星飛ぶや雨に降られたままでいる

としてはどうでしょうか。「星飛ぶや」とすると「や」の後に時間と空間の余韻がたっぷり生まれます。そのあとに、おもむろに「雨に降られたままでいる」と続きます。

表現を再構成する

つぎに言葉の背景にある情景や作者の意図を考えながら、表現を再構成する、ややハイレベル?な添削を試みます。

祖母の手の細さを知りて目貼剥ぐ

岡田水澪さん(潟上市、会社員22歳)の作。祖母が目貼を剥ぐのであれば「祖母の手のその細きこと目貼剥ぐ」とする案が考えられます。しかし「知りて」とあるので、高齢の祖母の手が細くなったのを知って、孫である作者が祖母に代わって目貼を剥ぐのだと解釈しました。「知りて」を直してみたいと思います。私の添削案は、

細き手の祖母が見てをり目貼剥ぐ

です。目貼を剥いでくれる孫の姿を祖母が見守っている場面を想像しました。作者の意図と合っているかどうか、少し心配です。

短い文に切って考える

眠すぎてミルクに溺れる子猫かな

浦島奈々さん(能代西高3年)の作。子猫が春の季語。眠そうな子猫が皿のミルクに突っ伏している。あるいはミルクに噎(む)せている。子猫の可愛らしい姿を捉えた作です。添削のポイントがいくつかあります。「眠すぎて」の「すぎて」は不要です。「溺れる」はじっさいに溺れるわけでなく、溺れそうだという意味ですね。「ミルクに溺れる」が八音で字余りです。やりくりが難しいときは短い文に切ってみましょう。一つは子猫が眠いということ。もう一つは、ミルクに溺れそうだということ。それをつなぐと「猫の子は眠しミルクに溺れんと」となります。さらに句の仕上がりを元の句に近く、柔らかくしましょう。添削の最終案は、

眠そうな子猫ミルクに溺れそう

です。旧かな表記では「眠さうな子猫ミルクに溺れさう」です。私の添削案が作者のお気に召すとよいのですが…。

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