文語を使ってみよう

(2020年5月18日 付)

 俳句には多く文語が使われます。私たちがふつうに使っているのは口語です。文語には口語と違う文法があります。学校で習う文法なんて無味乾燥だと思っている人が多いと思います。たしかに教科書を読んで理解しようとすると面白くない。

 俳句を作るときおすすめなのは、どこかで聞いたことがある用例を思い出すこと。「君が代」の「巌(いわお)となりて」は文語。口語なら「巌となって」。「燃えよドラゴン」の「燃えよ」は文語。口語なら「燃えろ」。「三国志」の「死せる孔明生ける仲達(ちゅうたつ)を走らす」は文語。口語なら「死んでいる孔明が生きている仲達を走らせる」。「死なばもろとも」「毒を食らわば」の「死なば」「食らわば」は文語。口語なら「死ねば」「食らえば」。「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川」は文語。口語なら「兎を追ったあの山、小鮒を釣ったあの川」です。

 百人一首も参考になります。たとえば「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」には文語の助動詞が使われています(傍点)。助動詞なんて寒気がすると言う人もいるかもしれませんが、「たる」は「遠山に日の当りたる枯野かな 高浜虚子」と同じです。

 さて今回の添削では、文語の助動詞を使ってみたいと思います。

文字を減らしてみる

真夜中の水面に映る星月夜

 佐高夏輝さん(湯沢翔北高雄勝校2年)の作。星月夜は月がなく、星の明るい秋の夜。真夜中の静かな水面に星空が映っている。完成度の高い句です。もう一工夫、文字を減らしてみましょう。「水面に映る」を「水に映る」にすると、よりスッキリします。しかし一字余ってしまう。ここで

真夜中の水に映れる星月夜

とする手があります。「映れる」は「映る」の已然形(映れ)に存続の助動詞「り」の連体形(る)を付けたもの。水に映っている状態が持続しているのです。「映れる」は百人一首の「郭公(ほととぎす)鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる」の「残れる」と同じ形です。

口語か文語に揃える

日めくりに彼の暑き日を重ね見た

 茂木槙二さん(湯沢高3年)の作。日めくりの暦から、あの暑い夏の日を思い出すのです。「暑き」は文語(口語は「暑い」)。「重ね見た」は口語です。俳句は口語・文語のどちらで書いてもよいのですが、一句の中の言葉遣いはどちらかに揃(そろ)える必要があります。口語に揃えると「日めくりにあの暑い日を重ね見た」となります(「彼(か)の」は文語調。口語調なら「あの」です)。添削では文語に揃えましょう。「けり」を用いて

日めくりに彼の暑き日を重ねけり

としてはどうでしょうか。あの暑かった日を思い重ねたよ、という気持ちが強く出ます。「けり」は百人一首の「忍ぶれど色に出でにけり我恋はものや思ふと人の問ふまで」の「けり」と同じです。

意味を明確にする

かやりびや円を描いて祖母の顔

 青木帆花さん(秋田北鷹高3年)の作。蚊遣火(かやりび)=蚊取線香=の煙が祖母の顔の前で円を描いている、と解しました(祖母の顔が円を描くのは変ですから)。その意味合いがハッキリするような添削を試みます。「けむり」という言葉は必要です。そのぶん文字を減らす必要があります。「円を描く」を「輪をなす」に言い換えて文字を減らし、

かやり火のけむり輪をなす祖母の顔

としてはいかがでしょうか。

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