「引き算」でスッキリ

(2020年8月24日 付)

 俳句を作るときの頭の使い方には「足し算」と「引き算」があります。

 まず「足し算」の例です。昨年の全国高校俳句選手権大会の最優秀句

 

 中腰の世界に玉葱の匂ふ 重田渉

 

は「玉葱(ねぎ)」という題に「中腰の世界」という独特のイメージを加えた作です。そこでは言葉と言葉の「足し算」が用いられています。

 いっぽう「引き算」も大切です。何かを十七音で言おうとすると、言いたいことが多くて窮屈(きゅうくつ)な作品になってしまう。そこで「引き算」を使うとスッキリします。

 

 ひろびろと富士の裾野の西日かな 高浜虚子

 

は「ひろびろと射せし裾野の西日かな」を推敲(すいこう)した作です。西日は射すに決まっていますから「射せし」を略し、スッキリと仕上げました。

 今回は「引き算」の具体例として、動詞を省略する添削を試みます。

余計なことは言わない

セーターのぬくもり感ず帰り道

 高杉悠太さん(秋田中央高3年)の作。セーターが冬の季語。セーターを編んで(買って)くれた人への感謝の気持ちが感じられます。そもそも「ぬくもり」というものは感じるものですから、「感ず」を略してみましょう。すると「セーターのぬくもり帰り道」となって文字が足りません。そこで足し算の出番です。この句で言いたいのは「ぬくもり」だけです。余計なことは言わないほうがよい。そこで

セーターのこのぬくもりよ帰り道

としてはどうでしょうか。「このぬくもり」と言っただけで十分に気持ちが伝わると思います。

いろいろな案を並べる

送り盆ノシノシ帰る牛の影

 渡邊和佳さん(本荘東中3年)の作。迎え盆では、仏様は馬に乗って早くやって来る。送り盆では牛に乗ってゆっくり帰ってゆく。このことを踏まえ、あの世へ帰ってゆく仏様の様子を「ノシノシ帰る牛の影」と詠みました。「送り盆」とあるので「帰る」は省略できます。その結果、三文字の余裕が出来ます。その三文字をどう使うか。いろいろ考えられます。

送り盆ノシノシとその牛の影

送り盆ノッシノッシと牛の影

ノシノシと影曳く牛や送り盆

等々。このようにいろいろな案を並べて見ると、この句の眼目が「ノシノシ」と「影」であることがわかります。「ノシノシ」は力強く、「影」は淋しい。そこに詩情を感じます。

材料を減らす

子に習い手足ちぢめて木陰入る

 柴田木綿子(ゆうこ)さん(湯沢市、28歳)の作。真夏の日差しを避けて小さな木陰に入ろうとする親子。子供に習って手足を縮める母。顔を見合わせ、思わず笑ってしまう母と子。この句は「子に習って母も」「小さな木陰に入る」「手足を縮めて」という材料から出来ています。もうすこし材料を減らすと、読者にとって読みやすい句になると思います(作者にとっては、どれも言いたいことなのですが……)。たとえば

子に習い母も木陰に身をちぢめ

ではどうでしょうか。「手足をちぢめ」を「身をちぢめ」に言い換えました。「木陰入る」の「入る」は省略しました。木陰が小さいことを詠んで

母と子に木陰小さし身をちぢめ

とする案も考えられます。情景がよくわかるのはこの案だと思います。

 投稿句を自分の句のようにいじってしまいました。失礼しました。今回私が言いたかったのは、――言葉(主に動詞)を省略することで文字数に余裕を生み出し、その余裕を生かしていろいろな句形を試してください。そして句が変化するのを楽しんでください。――ということです。

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