比喩で情景を伝える

(2020年9月7日 付)

 「こんなことをして、あたしってバッカみたい」とか、「今日の気分は晴れのち曇りだ」とか。本気で自分はバカだと言っているわけではないし、気分は天気ではない。これらは比喩です。ふだん何かを説明しようとするとき、「何とかのようなものだ」というと、パッとわかることがよくあります。
 俳句も比喩を使います。高浜虚子の

 

 (1)去年今年貫く棒の如きもの

 

は歳月の流れを「棒」に喩(たと)えました。同じ虚子の

 

 (2)水打てば夏蝶そこに生れけり

 

は、本当に蝶が生まれたわけではなく、生まれたかのように忽然(こつぜん)と現れたのです。「如き」を伴う(1)は直喩、そうでない(2)は暗喩と言われます。
 俳句にとって、比喩は短い言葉で物事を端的に描写できる重宝な手法です。今回は、投稿句の比喩表現を見ていきます。

言葉の「動き」を生かす

ぱたぱたと雨降るように夏椿

 安田有紀さん(潟上市、34歳)の作。夏椿の花が散る様子を雨に喩えました。ふつう「雨」があれば「降る」は不要なので〈ぱたぱたと雨の如くに夏椿〉も考えましたが、「降る」があると句に動きが出ます。やはり元のままがよいと思います。

句を軟らかくする

はかなさをうつした様な白雪よ

 佐々木美月さん(秋田中央高2年)の作。「雪」と「はかなさ」はイメージが近いので、「~様な」という直喩の関係をきっちり書き込んでしまうと、句が硬い感じになります。この句はもっとフワッと詠みたいところ。そこで、「~様な」を消してはどうでしょうか。たとえば

はかなさを何にうつさん雪白し

 とすると、「はかなさ」と「雪」の関係が緩くなり、句に余裕が出来ます。

「直喩」を効果的に使う

ちり紙の山に埋もれる花粉症

 津嶋美夕さん(大館鳳鳴高2年)の作。「山」と「埋もれる」が暗喩です。花粉症を嘆きながらもどこか滑稽な気分もあります。この句に直喩を用いて

ちり紙が山の如くに花粉症

としても面白いと思います。この添削案は虚子の〈大試験山の如くに控へたり〉(このあと重大な試験が山のようにドンと控えている。学生も楽ではない)という句からヒントを得ました。

雨が去り天に宝物秋の虹

 岩村響さん(能代松陽高2年)の作。美しい虹を「宝物」に喩えました(暗喩)。「宝物」という言葉が硬いのが惜しい。虹の句ですから「天」は消せます。この句もさきほどの津嶋さんの句と同様、直喩を使うと良さそうです。

雨が去り宝のごとく秋の虹

とすると、夏ほどには現れない秋の虹を「宝」と思う気持ちがよりはっきりすると思います。

句に詩情を添える

風鈴やリズム伴奏風のうた

 寺田花音さん(秋田市・下新城小6年)の作。風鈴が「風のうた」の伴奏のようにリズムを添えているのです。「伴奏」と「うた」が比喩(暗喩)です。比喩を使わないで書くと〈風鈴やリズムを添えて風の音〉となりますが、これでは面白くない。比喩のない句案と見比べると、「伴奏」「うた」という暗喩が句に詩情を添えていることがわかります。

文語調にそろえる

車軸草その冠の崩れるや

 佐藤佳穂さん(秋田南高2年)の作。車軸草の花を「冠」に喩えました。花冠という言葉もありますが、この句の「冠」も暗喩です。「崩れるや」は、そろそろ形が崩れる頃かな、という意味。花が衰えてきたのでしょう。下五の「~や」は文語調ですから、動詞も文語にして

車軸草その冠の崩るるや

とするのがよいと思います。

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