二つの事柄でつくる

(2021年2月22日 付)

 十七音というサイズが、俳句という詩を考えるときの出発点です。十七音はどのくらいの分量でしょうか。江戸時代の作品を見てみましょう。

 

 木枕のあかや伊吹にのこる雪 内藤丈草

 郭公(ほととぎす)鳴(なく)や湖水のさゝにごり  同

 

 丈草(じょうそう)は芭蕉の高弟。芭蕉の死の場面を描いた芥川龍之介の小説『枯野抄』にも登場します。

 一句目は「木枕のあか」(七音)と「伊吹にのこる雪」(九音)を並べました。木枕(きまくら)の汚れ(垢=あか=)と伊吹山の残雪とを、冷たい早春の空気が結びつけています。

 二句目は「郭公鳴」(七音)と「湖水のさゝにごり」(九音)を並べました。ホトトギスが鳴き、琵琶湖の水が少し濁っている。梅雨どきの季節感を捉えています。

 この二句はどちらも二つの事柄(これらの句の場合は七音と九音)で成り立っています。十七音に入れられる情報量といえば、大体この程度なのです。

 今回は「俳句のサイズ」と「二つの事柄」ということを念頭に置きながら、投稿作品を見ていきます。

省略できる語を探す

紋白蝶不意に笑った迷子の子

 高橋文哉さん(東北公益文科大2年)の作。この句は、蝶(ちょう)=紋白蝶が飛んだ=と迷子(迷子がふと笑った)という二つの事柄で成り立っています。俳句の形にうまくおさまっており、十七音のサイズに見合った数の言葉が使われています。「迷子の子」の「の子」は省略できますから、その二音で切れ字が使えます。

紋白蝶迷子は不意に笑ひけり

 「けり」を使うと、迷子になっている子が、ほら笑ったよ、という心持ちが出ます。

紋白蝶飛べば迷子の子が笑ふ

とすれば、蝶を見たことによって子供が笑ったことがはっきりわかります。さらに

紋白蝶飛べば迷子が笑ふなり

としてもよいでしょう。

友の風邪手紙代わりにノートの見舞い

 佐藤那奈さん(大館鳳鳴高2年)の作。風邪で欠席した友人に授業のノートのコピーをあげたのでしょう。この句も「友の風邪」と「ノート」という二つの事柄で出来ています。二音余っているのは「手紙代わり」という説明に文字を費やしたため。「見舞い」という言葉があれば、「手紙代わり」を略しても友人を思い遣(や)る気持ちは伝わります。そこで、

お見舞にノートを貸しぬ風邪の友

とすれば十七音ぴったりです。じっさいは〈お見舞はノートのコピー風邪の友〉かもしれませんね。

表現を柔らかくする

足跡と車椅子跡雪道に

 清水健彦さん(40歳、大仙市)の作。雪道に車椅子の車輪の跡(轍=わだち=)と、人の足跡が残っている。足跡は車椅子を押す人のものかもしれません。この句の情景も「足跡」と「車椅子の跡」の二つの事柄で出来ています。俳句の骨法をよく押さえた句ですが、「車椅子跡」という表現が詰屈(きっくつ)ですので添削を試みます。

雪道の足跡車椅子の跡

 中七から下五を「句またがり」とし、「車椅子」と「跡」の間に「の」を入れました。さらに

雪にある足跡車椅子の跡

としてもよいと思います。「轍」という言葉を使った〈足跡と雪の轍は車椅子〉という案も考えました。「雪の轍は車椅子」は悪くないのですが、「足跡と」とのつながりが悪いのでボツです。

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