月ごとの気分を詠む

(2021年4月19日 付)

 俳句では、一月、二月など、月の名前を詠み込むことがあります。たとえば、

 

 一月の川一月の谷の中 飯田龍太

 

は厳冬の自然の姿を、簡潔な言葉で詠(うた)った名句です。いっぽう、

 

 三月の甘納豆のうふふふふ 坪内稔典

 

は、春の楽しい気分を「うふふふふ」で表現した異色作。この作者には〈一月の甘納豆はやせてます〉など月毎(ごと)に「姉妹作」がありますが、特に有名なのは「三月」です。

 

 詩に痩せて二月渚をゆくはわたし 三橋鷹女

 

 二月といえば、凛とした抒情(じょじょう)で知られる女流俳人鷹女のこの句を思い浮かべます。
 五月の初夏の気分にぴったりなのは次の句です。柔らかな髪をなびかせながら走ってゆく子供の姿が目に浮かびます。

 

 子の髪の風に流るる五月来ぬ 大野林火

 

 陰暦の六月は暑い盛りの水無月。次の句は夏山と夏雲の豪壮な風景です。

 

 六月や峰に雲置あらし山 芭蕉

 

 七月というと〈七月の青嶺まぢかく鎔鉱炉 山口誓子〉を思い浮かべる方もいるでしょう。私の愛誦(あいしょう)句は次の句です。

 

 夕月に七月の蝶のぼりけり 原石鼎

 

 火照(ほて)ったような夏の夕月に、ひらひらと舞い上がる蝶。一種不思議な幻想味を湛(たた)えた句です。

 

 峠見ゆ十一月のむなしさに 細見綾子

 

 比較的印象の薄い十一月ですが、〈あたたかき十一月もすみにけり 中村草田男〉と掲句とを十一月の名句として挙げます。
 十二月は「師走」の作例が目立ちますが、次の句は薪(まき)の束の間に潜んでいた冬の虫(バッタかコオロギの類でしょうか)を詠んだ佳句です。

 

 薪割ればはね出る虫や十二月 桜井土音

 

 その月がどんな月だろうかと考えながら、「○月」という形で俳句に詠み込むのも面白いものです。今回は「月」を詠み込んだ投稿句を見ていきます。

「月」の季節感を生かす

二月尽異動の噂立ち始め

 清水健丸さん(大仙市、41歳)の作。作者は四月に人事異動のある職場におつとめなのでしょうか。「二月尽(じん)」とは二月が終わるという意味。その頃になると「あの人そろそろ転勤だろうね」という「噂」が立ち始めます。川柳でもよい内容ですが、「二月尽」という季節の表現があるので、その点では俳句らしい作品です。

六月の木漏れ日連れて始まる今日

 高橋優さん(横手高2年)の作。前掲の芭蕉の句の「六月」は盛夏ですが、今日の「六月」は梅雨どきで草木が茂る季節。その六月にふさわしく「木漏れ日連れて始まる今日」が生き生きとしています。正岡子規の〈六月を奇麗な風の吹くことよ〉も草木を風が吹き抜ける六月を詠っています。
 ちなみに〈六月の女すわれる荒筵 石田波郷〉は戦後まもなくの作。道ばたに荒筵を敷いて「六月の女」がすわっている。この女はきっと女ざかりでしょう。終戦後の混乱期を逞(たくま)しく生き抜いている、場末の女を思わせます。

意味を明示する

渋滞の赤一色となる師走

 千葉優翔さん(秋田大2年)の作。年末の風景です。「渋滞」とあれば道路と自動車は不要と思われますが、「赤一色」が自動車の尾灯であることを明示したほうがわかりやすいと思います。たとえば

渋滞の尾灯赤々として師走

としてはいかがでしょうか。

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